080723投資報告:2023年8月、米国債格下げ

Internal Server Error

X

There was a problem contacting the server, please try after sometime.

Sorry, we are unable to process your request.

X

X

 

マーケット インサイツ

米国政府の信用格付けを「AAA」から「AA+」へ引き下げたフィッチの決定がもたらす影響について検証

重要な点

  • フィッチ・レーティングスは8月1日、米国債の信用格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げました。
  • 12年前のS&Pによる米国債の格下げ時には、株式相場は急落し、米国債利回りが急上昇しました。しかし今回は、より堅調なマクロ経済情勢を反映し、格下げの市場への影響は小さいと我々は考えます。
  • フィッチによる格下げを受けて、今後はボラティリティの上昇が想定されます。我々は、こうした市場環境における債券投資では分散化されたアクティブ運用アプローチに優位性があると考えます。

 

8月1日、フィッチ・レーティングスは米国債格付けを「AAA」から「AA+」へと1段階引き下げました1。フィッチは数カ月前、米国債務上限交渉が膠着状態に陥るなかで、格下げを行う可能性があることを警告していました。先に警告が発せられていたことから、今回の格下げは市場にとってさほど大きな驚きではないはずであり、また、リスクや基本的なファンダメンタルズの変化は何もないことから、市場の反応は小さいと我々は予想しています。当面は債務上限に関する懸念が存在しないこと、そしてここ最近は米国経済成長の堅調を示す数字が発表されていることを考えると、格下げのタイミングとしては異例であったと言えるでしょう。

今回のフィッチによる格下げは、債務上限交渉が膠着状態にある最中に米国債格付けを「AA+」に引き下げた2011年8月のS&Pによる決定の再来のように見えます。当時、米国株式は当初の急落を経て急速に回復し、「質への逃避」により米国債価格は実際のところ急上昇しました。しかし、当時のこうした動向は、現在よりもはるかに厳しいマクロ経済情勢の中で発生しています。現在の情勢で、フィッチによる今回の格下げが同じような影響をもたらす可能性は低いと考えられます。

市場が最も大きな反応を示すのは、おおよそ何かが初めて起きた時だと言えるでしょう。投資家は米国債格下げの衝撃を10年以上前に乗り越えてきているので、今回の市場への実際の影響はさほど大きくならないと我々は考えています。米国債利回りは、格下げの発表直後は変化がなかったものの、その後、取引時間の後半に上昇へ転じました。格下げのニュースそのものの影響の大きさは、はっきりしていません。なぜなら、近く実施される米国債入札が予想を上回る規模であること、そして米国労働市場が引き続き堅調であることが、格下げのニュースと同時に報道されたためです。

今般のフィッチによる格下げは、米国債への需要についての長期的な懸念を増幅させる可能性があります。我々は、投資資金を米国債から他の資産へシフトする動きが今後数十年間にある程度は進む可能性が高いと認識しつつ、ほとんどの投資家にとって米国債よりも安全性の高い選択肢は限られることから、こうした動きの進行は緩やかなものとなる可能性が高いと考えます。テクニカルな面からリスクの再配置が進む可能性もあります。例えば、格付けに関する厳格な政策ガイドラインを有する規制対象機関や他の機関は、米国債格付けの引き下げを相殺するためにリスク低減を迫られる可能性があります。しかし、こうしたガイドラインの大部分では格付けの中央値を指針として参照することが謳われているため、格付け会社一社による格下げ―たとえそれが3大格付け会社のひとつであっても―がリスクオフの流れを引き起こす可能性は低いでしょう。

市場及び投資への影響

債券市場の参加者たちは、この先数日間そして数週間にわたって、発生する可能性のあるシナリオを織り込んでいくことになるでしょう。それがボラティリティの上昇につながっていく可能性があります。フィッチによる格下げに対する反応として投資家がポジションを見直そうと動くなかで発生するこうしたボラティリティは、アクティブ運用マネージャーにとって歓迎すべき動向であり、我々はこの先の展開をしっかりと注視していきます。我々の債券ポートフォリオは、信用力と流動性の高いポジションを全般的に維持しています。今後スプレッドがより大きな投資機会をもたらす状況が到来した際には、我々により大きなリスクを取る手段を与えてくれるでしょう。

我々は一貫して、債券投資における分散化アプローチの利点を強調してきました。このアプローチには、米国政府のような単一の大型ソブリン発行体からの分散化も含まれます。格下げがパニックを引き起こす要因になるとは考えにくいものの、分散化というメッセージには、足元の情勢において繰り返し言及する価値が確かにあるのです。

 

1「Fitch Downgrades the United States' Long-Term Ratings to 'AA+' from 'AAA'; Outlook Stable」、フィッチ・レーティングス、2023年8月1日

 

特に記載のない限り、全ての議論は米国の市場、金融政策、財政政策を基にしています。

資産配分又は分散化は利益を保証するものではなく、また市場下落局面において損失を防ぐものでもありません。

全ての市場変動を克服する、或いは将来の結果を保証する投資戦略は存在しません。

投資した価値と投資によって得られるインカムは保証されたものではなく、下落する可能性も上昇する可能性もあり、投資家は当初投資した額を回収できない可能性があります。投資判断は常に各投資家に固有の財務上のニーズ、方針、目標、対象期間、リスク許容度を基になされるべきです。

投資価値および投資収益は保証されたものではなく、それらは下落または上昇する可能性があります。投資家は当初投資した額を回収できない可能性があります。投資判断は常に投資家の特定の資金ニーズ、目的、目標、対象期間、リスク許容度を基に決定されるべきです。

金融市場のトレンドに関する記述は現在の市場情勢を基にしたものでありこの先変動する可能性があります。市場が将来同様の状況下で同じようなパフォーマンスを生む保証は一切ありません。 予測を保証と捉えるべきではありません。

株式投資リスク

株式の投資価値は、全般的な経済情勢および特定の企業や特定のセクターに関する見通しの変化に応じて変動します。グロース株は株式市場の日々の動きにさらされており、またその長期的な潜在性やボラティリティは大きくなる可能性があります。バリュー投資には、証券が過少評価されていることを市場が認識しないリスク、また予想されたように上昇しないリスクを伴います。中小企業は大企業よりもボラティリティが高く流動性が低い傾向があります。小型株企業は大型株企業よりも製品ライン、市場、資金源が限られており、一般的に破綻リスクが高くなります。

債券投資リスク

債券の投資価値は、金利変動や市場動向に応じて変化します。一般的に、金利の上昇局面で債券価格は下落し、逆に金利の下落局面で債券価格は上昇します。時にジャンク債と称されるハイイールド債には、価格面でのボラティリティ、流動性の低さ、元利金の適時支払いにおける債務不履行の可能性についての高いリスクが伴います。債券にはまた、期限前償還、信用力、流動性、全般的な市場リスクといった他の種類のリスクも伴います。 長期債は一般的に金利変動への感受性が高く、償還期間が長いほど金利変化が債券価格にもたらす影響は大きくなります。債券の投資価値は、金利変動によってまた市場動向に応じて変化します。一般的な傾向として、金利低下時に債券価格は上昇し、逆に金利上昇時に債券価格は下落します。社債市場への投資は、市場リスク、金利リスク、発行体リスク、信用リスク、インフレ・リスク、流動性リスクなどにさらされます。通常、期間の長い債券ほど金利変動に対して敏感に反応します。つまり償還日までの期間が長いほど、金利変動が債券価格にもたらす影響度は高くなります。低格付けのハイイールド証券は、高格付け証券よりも高リスクで、これらの証券を含むポートフォリオは、これらを含まないポートフォリオと比べて、信用・流動性リスクが高くなる可能性があります。

ポートフォリオにおける証券の信用力は、スタンダード&プアーズ、ムーディーズ、フィッチといった全米で認知されている統計的格付け機関(NESRO)によって、発行体の信用力を示すものとして付与されています。格付けは「AAA格」(最高格付け)から「D」(最低格付け)までにわたります。「BBB」格以上の債券は投資適格と見なされます。「BB格」以下の格付けは低格付け債(ジャンク債)です。利回りの高い非投資適格債(ジャンク債)は、投資適格債よりも高いリスクを伴います。厳しい市場環境は、こうした証券における発行体の元利金支払い能力に影響を及ぼす可能性があります。

本リサーチには、将来の事由についての特定の前提をもとにした「将来の見通しに関する記述」という特定の前提が含まれています。実際の事由を予測することは難しく、前提とした内容と異なる可能性があります。

前述の経済レポートで示された見解は発表日現在のものであり、今後その内容が変更となる可能性があります。また弊社の見解を表明するものではありません。本資料は特定の投資または一般的な市場に関する予測、リサーチ、投資アドバイスとしての利用を目的として作成されておらず、また法的・税務上の助言を提供するものでもありません。本資料は当社が信頼できると思われる情報に基づいて作成されておりますが、当社はその正確性および完全性について保証するものではありません。

 

本資料は、情報提供を目的とした参考資料であり、有価証券の取得の申込み・取得の申込みの勧誘・売付けの申込み・買付けの申込みの勧誘、有価証券に関する投資助言をするものではなく、以上のいずれの行為に関しても一切用いることができません。また、本資料は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。

著作権 © 2023 by Lord, Abbett & Co. LLC無断複写・転載を禁じます。