マーケット インサイツ
米国債イールドカーブのフラット化が株式相場の下落を示唆するとの考えは、全体像を見ていない可能性があります。
米国の株式投資家は米国債券イールドカーブのフラット化について懸念すべきなのでしょうか?市場観測筋は、この問題を非常に気にかけてきました。実際、最近のブルームバーグの投資ブログは次のように指摘しています。「債券市場イールドカーブがフラット化する局面では常に株式市場にも同じことが起きる、と言えるのか?これは強気相場を試す最新の問いかけです。」1
こうした状況をよりよく理解するために、投資家はイールドカーブについて、そしてイールドカーブと景気、企業利益、最終的には米国株価との関係性について、より繊細な見方を持つべきであると我々は考えています。マーケットビュー特別号では今週と来週の2回にわたって、ロードアベットのパートナー兼戦略資産アロケーション・ディレクターであるジュリオ・マルティーニの見解をお伝えします。
図1が示す通り、2年物米国債と10年物米国債との間のイールドカーブの傾斜は2016年12月初め以降に74ベーシスポイント(bps)、2017年7月11日の直近ピーク水準からは34bpsフラット化しています。現在のイールドカーブは2007年9月以降で最もフラットな状態にあると、マルティーニは指摘しています。
図1. フラット化局面:米国債イールドカーブ
2年物と10年物米国債のイールドカーブの傾斜、2016年1月4日–2017年11月8日
出典:ブルームバーグ.
ここで示されたパフォーマンスは過去のものです。過去のパフォーマンスは信頼に足る指標ではなく、また将来の成果を保証するものではありません。過去のデータは例示を目的としたものに過ぎず、ロードアベットが運用する特定のポートフォリオあるいは特定の投資を示しているわけでなく、また将来の成果を予想あるいは描写することを意図したものではありません。投資家は異なる結果を経験する可能性があります。
こうした状況について、市場参加者が危惧する要因は何でしょうか?マルティーニによると、フラットなイールドカーブやフラット化局面について、株式や他のリスク資産にとって危険なシグナルと解釈する投資家が多いのです。これは、2年物と10年物米国債のイールドカーブがフラットであれば、短期金利の下落や超低金利状態の延長の見通しを示唆している可能性があるためです。
「米連邦準備理事会(FRB)の運営する金融政策が景気変動抑制的であれば、短期金利の下落見通しは、すなわち景気低迷、企業利益低迷の見通しを意味するはずです」とマルティーニは述べています。こうした状況は多くの場合、米国株式市場軟化の予兆だと考えられています。それなら、もし市場見通しが正しいのであれば、平均的には、景気が弱含みFRBが緩和政策を開始する前にイールドカーブのフラット化が進むはずです。つまり、イールドカーブの傾斜を景気の先行指標として利用できることになります。
しかしマルティーニは、こうした見方には欠陥があると指摘します。つまりイールドカーブのフラット化が常に将来の短期金利見通しの下方修正を意味しているわけではない、ということです。マルティーニによると、ここで理解しておくべき重要な点は、市場イールドカーブが2つの特徴的な構成要素から成り立っているということです。
市場利回り= リスク中立利回り(将来の短期金利に対する現在の見通し)+タームプレミアム(見通しについての不確実性)
マルティーニはタームプレミアムについて、将来の金利動向見通しに関する市場の不確実性のすべてが集まる「ガラクタの寄せ集め」と呼んでいます。将来のFRB政策、インフレ、流動性状況、他の様々な要因に、不確実性が関わっているからです。結局のところ、ここ最近のイールドカーブのフラット化の大半は、金利見通しそのものの下落ではなく、むしろタームプレミアムの下落(すなわち、将来の金利動向見通しについての不確実性の低下)に起因していると推測されます。(表1参照)
表1.米国イールドカーブのフラット化の、真の要因は何か?
表に示された期間における、2年物と10年物米国債のイールドカーブ傾斜の変化の内訳 (ACM分解*)
出典:ロードアベット
*米国ニューヨーク連銀のエコノミスト、トビアス・エイドリアン、リチャード・クランプ、エマニュエル・メンヒ(総称して「ACM」)による米国債利回りの過去データ分解を参照
ここで示されたパフォーマンスは過去のものです。過去のパフォーマンスは信頼に足る指標ではなく、また将来の成果を保証するものではありません。過去のデータは例示を目的としたものに過ぎず、ロードアベットが運用する特定のポートフォリオあるいは特定の投資を示しているわけでなく、また将来の成果を予想あるいは描写することを意図したものではありません。投資家は異なる結果を経験する可能性があります。
しかし多くの市場観測筋は依然として、イールドカーブの傾斜、GDP成長率、株式市場との間の連鎖関係についての時代遅れで単一的な見方を持ち続けているのではないでしょうか。「長期的な不確実性の相対的下落に起因するイールドカーブのフラット化が米国GDP成長率予測に与える影響は、将来の短期金利下落見通しに起因する株式相場の下落とは大きく異なるはずです」とマルティーニは述べています。では株式は?将来利子率の低下見通しが株式にとってマイナスの意味を持つ可能性がある一方で、タームプレミアムの低下と株式市場の下落の間に歴史的関連性は見られません。詳しい説明は、来週に続きます。
1ステファン・ガンデル、“Bond Investors Are Stock Investors’ Latest Concern,” ブルームバーグ、2017年11月9日
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