061918TIPSを超えて: 米国インフレ防衛に「特化した手法」

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マーケット インサイツ

消費者物価指数(CPI)スワップと短期債への戦略的アロケーションの組み合わせは、米国物価連動国債のような金利リスクの無い、より直接的なインフレ対策手法を提供します。

要旨

  • 米国労働市場統計の力強さとインフレ期待の上昇が相まって、投資家は、米国インフレの持続的上昇の可能性について改めて考えざるを得ない状況にあります。
  • それでは投資家は、どうすればポートフォリオを守ることができるのでしょうか?インフレ防衛への最も一般的なアプローチは米国物価連動国債(TIPS)ですが、これには重大な欠点が1つあります。金利上昇に対して極めて敏感なことです。
  • 対照的に、米国消費者物価指数(CPI)に連動するスワップポートフォリオは、TIPSのようなデュレーションエクスポージャーの無い、インフレリスクに対するより直接的なヘッジ手段を提供することができます。

 

今週は、関連の話題について再考察します。それは、米国の景気拡大が着実なペースで続き労働市場が力強く推移するなかで、債券投資家は今後の米国インフレ上昇に対していかに備えることができるのかという問題です。

ここ数年、米国のインフレはしっかりと抑えられてきており、米連邦準備制度理事会(FRB)が好むインフレ指標であるコア個人消費支出価格指数は、過去6年間ほぼ2.0%以下で推移してきました。しかし米国の景気拡大が続くなかで、こうした状況は変わる可能性があります。例えば、直近の雇用統計によると、失業率は3.8%まで低下しました。これは2000年以降で最も低く、過去50年間の最低水準に近い数字です。

実際のところ、逼迫する労働市場にもかかわらず、賃金圧力はこれまでのところ比較的緩やかに推移してきました。しかし、ロードアベットの戦略資産アロケーションディレクターであるジュリオ・マルティーニは、史上最高水準となっている米国求人件数に反映される極めて力強い労働需要は、現在の失業率が示唆するよりはるかに逼迫した労働市場の状況と一致すると指摘しています。「労働市場の余剰を示す総合指標は既に低水準にありますが、これが急激に逼迫すれば、インフレ期待の急上昇の引き金となりかねません」と彼は述べています。

そしてインフレがFRBの目標値である2%以下で推移しているなか、ここ最近の統計内容は消費者物価の上昇傾向の継続を示しています。(図1参照)こうした上昇傾向は、インフレ期待がここ数年来の最高水準に達していること(図2に示される通り)と相まって、インフレの持続的上昇の可能性に対する市場の注視が強まっていることを示しています。
 

図1.  2つの主要な統計は、ここ数カ月の米国インフレ上昇傾向の継続を示唆している

総合消費者物価指数(CPI)とコアCPI(いずれも%)、2014年4月30日-2018年4月30日


出典:米国労働統計局。コアCPIは食品及びエネルギー価格を除く

図2.  米国インフレ期待は上昇している

5年CPIスワップブレークイーブン率(%)、2013年6月7日-2018年6月1日


出典: ブルームバーグ。5年インフレ期待は5年物ゼロクーポンインフレスワップ金利によります。

過去のデータは例示を目的としたものに過ぎず、ロードアベットが運用する特定のポートフォリオあるいは特定の投資のパフォーマンスを示すものではありません。また将来の成果を予想または示唆することを意図したものでもありません。投資家は異なる結果を経験する可能性があります。他の期間におけるリターンは上記とは異なる可能性があります。市場のボラティリティによって、市場は将来同様の状況下で同様のパフォーマンスを示さない可能性があります。全ての投資同様、インフレデリバティブには慎重に評価されるべき特定のリスクが伴います。これらの証券は通常の株式投資や債券投資よりも複雑である一方で、株式投資や債券投資と同様の流動性及び潜在的な債務不履行による影響を伴います。

過去のパフォーマンスは将来の成果を保証するものではありません。

物やサービスの価格上昇によるマイナスの影響から自らのポートフォリオ(特に保有債券)を守りたいと考えている投資家は、インフレ防衛戦略に目を向けるのが一般的です。しかし我々が先に強調したように、最も一般的なインフレヘッジ戦略は物価連動国債(TIPS)に焦点を当てたものであり、これは投資家が期待するようなプロテクションを提供できない可能性があるのです。

TIPSはインフレに連動する米国債の一種であり、TIPSの元本は米国消費者物価指数(CPI)の変動に基づいて調整されます。こうしたインフレ調整はインフレによる影響への対抗策になり得ますが、TIPSにはデュレーションの要素も存在します。実際、最も広く利用されているTIPSのベンチマーク指数を指標とする最大の上場投資信託(ETF)であるブルームバーグバークレイズ米国TIPSインデックスの実効デュレーションは7.6年です。同TIPSインデックスはデュレーションの長い政府関連債で構成されていることから、こうしたインフレ防衛証券のパフォーマンスは米国債や他の信用力の高い債券との相関性が高いことが歴史的に分かっています。その結果、金利上昇局面においてTIPSの投資家はそのパフォーマンスにがっかりさせられ続けてきました。彼らがプロテクションを期待していたまさにその局面で、金利感応度の高さによるマイナスの影響を認識させられてきたからです。良く知られた事例を一つ挙げると、2013年の金利急騰の後、ブルームバーグバークレイズ米国TIPSインデックスの暦年リターンはマイナス8.6%という大幅なマイナスを記録したのです

表1は、年初からこれまで(2018年6月8日まで)の期間の、各種債券インデックスリターンに対する金利上昇の影響をまとめたものです。今年の債券リターンを左右している重要要素はデュレーションであり、広範な債券市場指標であるブルームバーグバークレイズ米国総合債券インデックスの下落幅は2.0%を超えました。短期社債のようなデュレーションの短い債券のリターンは基本的に横ばい、デュレーションエクスポージャーがほとんどあるいは全くない変動利付証券のリターンはプラスでした。投資適格変動利付社債は1.1%、投資適格未満のバンクローンは2.5%の上昇を記録しました。これは、デュレーションの限定性が金利上昇の影響を抑制したこと、そして当期インカムがプラスのトータルリターンにつながったことによります。

表1.  デュレーションは2018年債券リターンへの逆風となっている

トータルリターン、年初から2018年6月8日までの期間 

出典: ブルームバーグ。「ブルームバーグバークレイズ総合インデックス」はブルームバーグバークレイズ米国総合債券インデックスを指します。米国TIPSはブルームバーグバークレイズ米国TIPSインデックスによります。短期社債はICE BofAML 1-3年米国社債インデックスによります。ハイイールド債はICE BofAML ハイイールド債インデックスによります。投資適格変動利付債はブルームバーグバークレイズ投資適格変動利付債インデックスによります。バンクローンはクレディスイスレバレッジドローンインデックスによります。

過去のパフォーマンスは信頼に足る指標ではなく、将来の成果を保証するものでもありません。上記は例示を目的としたものに過ぎず、ロードアベットが運用する特定のポートフォリオあるいは特定の投資を示すものではありません。インデックスは非マネージド型であり、直接に投資することはできません。債券投資には市場、金利、発行体、信用力、インフレリスク、流動性リスクを含むリスクが伴います。米国債や政府関連証券は信用リスクに対して大きなプロテクションを提供する一方で、金利変化による価格変動から投資家を守ることはありません。分散化は利益を保証するものではなく、また市場下落における損失を防ぐものでもありません。

それでは、米国債券投資家が過度の金利リスクを取らずにポートフォリオリターンに対するインフレ上昇の弊害を軽減する方法はあるのでしょうか?投資家が考慮すべきひとつの戦略は、CPIに連動した専門的に運用されたスワップポートフォリオを採用することでしょう。インフレ期待の動向と総合CPIの変化をつかむことによって、CPIスワップの価値は、伝統的なTIPS戦略のような金利エクスポージャーにさらされることなく、より直接的にインフレをターゲットとすることができます。[注記: CPIスワップとTIPSにおけるCPI調整は共に、コアCPI指数ではなく、食品とエネルギーを含む総合CPIに基づいています。] TIPSとは異なり、CPIスワップは歴史的に見て米国債とは負の相関関係にある(図3参照)ことから、投資家の保有債券の分散化の効率性を高める可能性があります。

図3. 分散化による影響:米国債とコア債券が一方に動く時、CPIスワップは逆の方向に動く
各ベンチマーク指標との5年相関係数、2018年5月31日時点



出典:モーニングスター及びブルームバーグ

CPIスワップはブルームバーグインフレーションスワップ米ドル建て5年ゼロクーポンインデックスによります。TIPS(物価連動国債)はブルームバーグバークレイズ米国TIPSインデックによります。「ブルームバーグバークレイズ総合インデックス」はブルームバーグバークレイズ米国総合債券インデックスを指します。米国債はブルームバーグバークレイズ米国債インデックスによります。

投資家は、CPIスワップ、TIPS、あるいは他のいずれの証券においても、過去のパフォーマンスは信頼に足る指標ではなく、将来の成果を保証するものでもないということを覚えておくべきです。上記は例示を目的としたものに過ぎず、ロードアベットが運用する特定のポートフォリオあるいは特定の投資を示すものではありません。インデックスは非マネージド型であり、手数料や費用の控除は反映されておらず、また直接に投資することはできません。分散化は利益を保証するものではなく、また市場下落における損失を防ぐものでもありません。
 

こうした目標を達成するための方法の一つとして、分散化された短期債ポートフォリオにCPIスワップを上乗せした組み合わせが挙げられるでしょう。この組み合わせがどのように作用するかを説明します。実際の米国インフレ率が各スワップ契約に記載された予想水準と一致する場合、CPIスワップはリターンに影響を与えません。このケースでは、この戦略は原資産である債券ポートフォリオのリターンをそのまま得ることになります。インフレ率とインフレ期待が上昇する場合には、CPIスワップの価値も上昇し、原資産である債券ポートフォリオのリターンを増大させます。逆に、インフレ期待が低下した場合には、スワップの価値は原資産である債券ポートフォリオの価値を損なうことになります。インフレ期待が急低下するような一定の環境下において、CPIスワップのリターンはマイナスになる可能性があるという点は、留意すべき重要事項です。しかし、インフレ期待と金利が低下する局面は、信用力の高い債券にとっては一般的に非常に有利な環境となります。

多くの投資家たちは、TIPSの潜在的なデュレーションリスクを考慮して、短いデュレーションのTIPSに目を向けることで、広範なTIPSカテゴリー(ブルームバーグバークレイズ米国TIPSインデックスによる)の金利リスクを負うことなくインフレへのプロテクションを得ようとしてきました。こうしたアプローチは、デュレーションエクスポージャーを抑制するものの(短期TIPSインデックスの動きを追跡する最大のETFの現在の実効デュレーションは2.7年です)、インカムにとっての好機をもたらすことはほとんどありません。例えば、5年物TIPSベンチマークの最近の実質(インフレ調整後)利回りは0.7%でした(2016年半ばの利回りマイナス0.5%からは大幅な上昇)。CPIスワップを短期デュレーション債券ポートフォリオと組み合わせる戦略は、短期デュレーションへのエクスポージャー維持による金利リスクの抑制を図りつつ、一段と魅力的なインカム及びインフレ上昇の恩恵を受ける潜在性を提供できるのです。

総括

CPIスワップは、これまで検証した特質によって、インフレ防衛の代替戦略の重要要素になり得ます。特に不動産やコモディティー(商品)といったインフレヘッジのための伝統的な手段と比べると、CPIスワップは米国のインフレ防衛に「特化した手法」であると言えます。信用力に敏感な短期債にCPIスワップを上乗せした組み合わせを使うことで、資産運用マネージャーは、伝統的なTIPS戦略よりも高利回り低デュレーションのポートフォリオを作り出せる可能性があります。こうした戦略は、投資家が望む米国インフレ防衛策を、TIPSの潜在的なデュレーションリスク無しに提供できると言えるでしょう。
 

リスクについての注記:債券の投資価値は金利変動によってまた市場動向に応じて変化します。一般に、金利上昇時には債券価格は下落し、逆に金利低下時には債券価格は上昇します。ジャンク債と時に称される高利回り債ではより高い価格変動リスク、流動性の低さ、適時の元利払い不履行リスクを伴います。債券はまた期限前償還リスク、信用リスク、流動性リスク、金利リスク、そして全般的な市場リスクといった他のリスクも伴う可能性があります。通常では、より期間の長い債券は金利変動に対してより敏感に反応します。つまり償還日までの期間が長いほど、金利変動が債券価格にもたらす影響度は高くなります。低格付け債は高格付け債に比べて高いリスクにさらされる可能性があります。いかなる投資戦略もすべての市場変動を克服することはできず、また将来の投資成果を保証することはできません。さらにはローン保証に利用される特定の担保価値が下落する可能性や流動性が低くなる恐れがあり、ローン価値にマイナスの影響を及ぼす恐れがあります。株式証券の投資価値は全般的な経済情勢や特定の企業・セクター見通しの変化に応じて変動します。低格付け債券は高格付け社債より高いリスクを伴います。海外投資は一般に国内投資より高いリスクを伴い、それらには価格変動や高い取引コストが含まれます。海外投資には本来、通貨変動や海外事由、政治・経済事由に関連するリスクを含む特有のリスクが存在します。全ての市場変動を乗り越え、将来の成果を保証する投資戦略は存在しません。

TIPS (物価連動国債)は、インフレによるマイナスの影響から投資家を守ることを目的としたインフレに連動した米国債です。TIPSの元本はCPI-U (都市部消費者物価指数)によって調整されます。インデックスが上昇、すなわちインフレが発生した場合、元本は増加します。逆に、インデックスが低下、すなわちデフレが発生した場合、元本は減少します。利率は固定であり年2回支払われますが、利率は調整元本に適用されることから、利払い額は変動します。具体的には、各回の利払い額は、調整元本に利率の半分を乗じた額によって決定されます。償還時には、TIPSは当初元本あるいは調整元本のどちらか大きい方を支払います。TIPSはインフレによって調整されることから、実質金利(名目金利ではなく)の変化がTIPSの価値に影響を与えます。実質金利が上昇した場合にはTIPSの価値は下落し、逆に実質金利が低下した場合にはTIPSの価値は上昇します。

本リサーチには将来の事象についての特定の前提を基にした「将来の見通しに関する記述」という特定の前提が含まれています。実際の事象を予測することは難しく、前提とした内容と異なる可能性があります。将来の見通しに関する記述が実現するか、または実際のリターンや結果が本リサーチで記述した内容と大きく異ならないかについては保証することはできません。金融市場のトレンドに関する記述は現在の市場情勢を基にしており、これは変動する可能性があります。市場が将来同様の状況下で同様のパフォーマンスを示すかについては保証できません。

消費者物価指数(CPI)はあらかじめ定められた物・サービスによるバスケットの各項目の価格変動を測定しており、それぞれの項目の比重は消費者に対する重要性によって決められています。

相関度は2つの変数の関係の強度を示す統計指標です。相関度は1.0から-1.0の間で変動します。

CPI スワップは金利スワップの一種で、固定払いについては現在の予想インフレ率、変動払いについては実際のインフレ率を基に決定します。実際のインフレ率は、食品及びエネルギーを含む総合消費者物価指数(CPI)の累積変化によって算出されます。CPIスワップの中で最も一般的なタイプはゼロクーポンスワップです。これは、唯一の支払いが契約満了時に発生することから、このように称されています。つまり、ゼロクーポンスワップ契約に合意した時点そして契約期間中に、現金の支払い義務は発生しません。

デュレーションは市場金利が1%変化することで生ずる債券価値の変化です。一般にポートフォリオのデュレーションが大きいほど、金利リスク及び債券価値に対する利益は大きくなります。デュレーション・ニュートラル・アプローチとは、ポートフォリオがベンチマーク指標と同じデュレーションとなるように債券ポートフォリオを運用する手法を意味します。

ブルームバーグバークレイズ米国総合インデックスはブルームバーグバークレイズ国債/社債インデックス、モーゲージ担保証券インデックス、資産担保証券インデックスの債券によって構成される非マネージド型インデックスです。トータルリターンは価格上昇/下落とインカムの原投資額に対するパーセントで表されます。同インデックスは時価総額に応じて毎月リバランス(配分比率の調整)されます。

ブルームバーグレイズ米国債インデックスは償還日までの期間が12ヵ月を超す固定利付米国債のパフォーマンス及び特性を評価するために設計された規定に基づく市場価値加重インデックスです。

ブルームバーグバークレイズインフレーションスワップ米ドル建て5年ゼロクーポンインデックスは、5年のインフレスワップに投資した場合のパフォーマンスを複製するよう設計された取引可能なインデックスです。同インデックスは月ごとに一定の償還期間を維持するインデックスです。ゼロクーポンインフレーションスワップは、インフレに連動したキャッシュフローと固定キャッシュフローを償還時に交換します。

クレディスイスレバレッジドローンインデックスは、米ドル建てレバレッジドローン市場の投資可能な領域を反映するよう設計されたインデックスです。

ICE BofAML 1-3年米国社債インデックスは、最終償還日までの期間が1年から3年までの米国内市場で公募発行された米ドル建て投資適格社債によって構成される非マネージド型インデックスです。

ICE BofAML 米国ハイイールド債インデックスは、米国内市場で公募発行された投資適格未満の米ドル建て社債のパフォーマンスを示すインデックスです。

前述の経済レポートで示された見解は発表日現在のものであり、今後その内容が変更となる可能性があります。また弊社の見解を表明するものではありません。本資料は特定の投資または一般的な市場に関する予測、リサーチ、投資アドバイスとしての利用を目的として作成されておらず、また法的・税務上の助言を提供するものでもありません。本資料は当社が信頼できると思われる情報に基づいて作成されておりますが、当社はその正確性および完全性について保証するものではありません。

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